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津田堅之介さんエッセー続編「ゲンジボタル・上陸した幼虫の運命やいかに!」 07.01.07

津田堅之介さんエッセー続編「ゲンジボタル・上陸した幼虫の運命やいかに!」

前回までは、ホタルの知られざる習性と、ホタル保護の問題についてお話しましたが、話を大谷さんのホタル観察へと戻しましょう。

大谷さんによると、ゲンジボタルの幼虫の上陸は命がけの実に過酷な試練であり、特に人間の無思慮な河川開発が更にその困難を増大させるのだそうです。

ゲンジボタルの幼虫は、蛹になるために川から出て川の土手を這い上がったあと、やわらかい土の地面を探すともぐり込み、そこで蛹になります。自然のままの川だったら、水際からちょっと這い上がれば、すぐに草地になりその根元にもぐりこむことができますね。

070107tsuda_hotaru.jpg

しかし、大谷さんが観察した場所はコンクリート三面張りの護岸で、水から出た幼虫たちにはまず切り立ったコンクリート面を、少しずつ少しずつ延々と這い上がらなければいけないという試練が待ち構えていました。

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やっとのことで這い上がっても、そこにはさらにコンクリートの道路が。そして、また黙々とその道を横断したある幼虫は、運良くそこに植え込みがあり、すぐもぐりこむことが出来たそうです。

ところが、そのたった数センチ横を這っていた幼虫は、不運にも植え込みの切れ間に当たってしまい、またさらに延々とコンクリート道路や、土を突き固めたゲートボール場を横断しなければならなかったのです。

幸いにも彼は、ゲートボール場の縁にたまたま植えてあった、木の回りの土の露出部分に出くわし、やっと根元にもぐりこむことができたそうなのですが、そこに出食わさなければ、彼は延々と山の縁まで歩き続けなければいけなかったでしょう。

このように、大谷さんの個体追跡調査の結果は、ホタルの住みやすい環境作りのための、貴重な情報を与えてくれています。そして、そういうホタルのために優しい環境作りは、私たち人間にとっても優しい環境を作ることになるのです

それにしても、山に隣接した公園内のはずれに作られた、明かりも全く無いゲートボール場で、弱々しく光る蛍の幼虫を一人ぼっちでただひたすら一晩中見つめ続ける大谷さんの、研究者根性にはただただ感心させられました。

しかし、当然ながらそのことを知らない方には、非常に怪しい人に見えたようです。

たとえば大谷さんは、モンシロチョウの観察の時は、お尻のところに小さなイスをくくりつけて、首からは記録用紙を貼り付けた画板を紐でぶら下げ、モンシロチョウがとまっていれば座って何時間もじっと見つめ続け、飛べば見失わないように追いかけ、とにかくひたすら一個体を追い続けていました。

ある日栗林研究所に「坊田地区公民館のそばに変な人がいる。お尻にイスをくくり付け、首からは板のようなものをぶら下げている。何時間もじっと座って動かないかと思えば、急に立ち上がって走り出す」という連絡が来たらしいのです(笑)

僕も今では慣れっこになってしまいましたが、フィールドワークをやっていると山の中で自殺死体に間違えられたり、お巡りさんに不審尋問されたりなどは日常茶飯事です。

ですから初めての場所で山へ入る前は、必ず交番へ行き、地主さんへ挨拶することを習慣付けています。人が行かないような不気味な場所へ行き、人とは全く違う動きをしている上に、見ている人にはボクらが狙っている対象物は小さすぎて見えないわけですから、不審者と思われるのは当たり前といえば当たり前ですね。

しかしそこまで徹底してやらなければ、生き物の知られざる生態の謎を解き明かしたり、写真や映像に記録することは出来ないのです。

ちなみに、熊本でキツネの撮影のため、杉林にテントを張って一週間泊まった時は、親切な地主さんが「あそこには白髪の婆さんが出るから、絶対に泊まらん方がよかばい」と真顔で忠告してくれました。

ボクは「ハイ気を付けます。ありがとうございます」と言いながら「白髪の婆さんの幽霊でも撮れたらスクープだなあ」と期待していたのですが、結局夜中に現れたのは「キャーキャー」と自分の縄張りに泊まりこんでいる不審者、ボクに対して警戒声を発しながら林道を跳ね回るキツネでした。もしかすると、これが白髪の婆さんの正体だったのかもしれませんね(笑)
070107tsuda_hondogitsune.jpg

なお大谷剛さんは2005年の6月、今までの昆虫研究の集大成として、昆虫-大きくなれない擬態者たち(税込み2800円)
(紹介ページ)
を農文協から出版されました。専門的な昆虫の生態学についてだけではなく、観察中の抱腹絶倒の裏話なども織り交ぜられ、読み物としてもとても楽しめますので、ぜひ皆さんもご覧ください

以前、君たち動物写真家はマゾだと言われたことがありました。みんなが嫌で嫌でたまらないことを、実に楽しそうにやる変な人種だと。

たしかにそうですね。

まさにボクはある種の奇人変人であるおかげで、今の動物写真家という仕事を心底から楽しんでやっていられるわけです。

例えばある朝の女房との会話です。

「今夜は、撮影終わったら林道通って帰ってくるよ」(僕)
「え~危ないんじゃないの~」(女房)
「えっ危ないって何で?」(僕)
「だって何が出てくるか分からないじゃん」(女房)
「何が出てくるか分からないから、面白いんじゃん。下の道なんて酔っ払いが運転してるかもしれないしよっぽど危ないよ」(僕)てな感じですね

「お前よくやるよ~まったく!」というのは、ボクの仕事に対する最大の賛辞だと思います。

栗研にいた頃、カエルの時期には草野慎二先生の姿を昼間は全く見かけませんでしたし、動物相手の研究者や写真家は、仕事をしている期間中は相手の動物以下の暮らしをしなければいけないのです。

最後に、大谷さんの研究の鬼としての極めつけの、忘れられない一言を!

「個体追跡法での観察中は、相手から目を離すわけにいかないので、一人でやるのは本当に大変だよ。当然トイレにも行けないから、野外ロケ中の女優さんのように、なるべく水分を取らず我慢してるんだよ。いっそのこと、横っ腹にコックでも付けて、そこからオシッコ出来れば楽なんだがなあ」

津田堅之介生物生態写真研究所
日本写真家協会(JPS)会員 日本哺乳類学会会員
津 田 堅 之 介
福岡県久留米市

○日本写真家ユニオンポートフォリオ

○ブログ「ボクは動物カメラマン・津田堅之介撮影日記裏話」

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