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エッセイ ~野生のサル~ 06.07.24

エッセイ ~野生のサル~ 06.07.24

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1月から、ボクの住む福岡県久留米に、野生のニホンザルが出没し騒ぎになっています。
そして、2月8日には遂に恐れていた事故が起こりました。
外にいるサルを覗いた中学生に、サルが窓越しに飛びついてガラスが割れ、5針縫う怪我を負わせてしまったのです。
早速、有害動物駆除の許可が出て、サルは捕獲されることになりました。
人に危害を加えたのですから、やむを得ないかもしれないのですが、社会一般にサルのことがもっと知られていれば、防ぐことが出来た事故なだけにとても残念です。そして、ニホンザルの習性からして、彼等はまた必ずどこからか現れます。
このままではきっと、また同じような事故が起こるでしょう。
そこで、意外と知られていないサルの真実の姿、そして彼らと平和に共存するには、どうしたら良いかについて皆さんと一緒に考えたいと思います。
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サルはどこから、そしてなぜ久留米に来たのか
福岡県内で、サルの群が生息しているのは、佐賀と福岡の県境、背振山周辺と香春町だけです。彼らは、遊動域と呼ばれる決まった範囲を、餌を探して周回移動しながら生活しています。
そのサルがなぜ、離れた久留米に現れたのでしょう。
実はオスザル達は、ある宿命を背負って生まれてきます。
原則的には、全てのオスがある年齢になると群を離れ旅に出るのです。彼等は、単独で気ままな一人旅をしたり、オス同士で小グループを作ったりしますが、やがて気に入った群を見つけると入り込んで定着します。理由はまだはっきりしませんが、結果的に、近親交配が避けられることになります。
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つまり久留米に現れたのは、そういう若いオスザルだと思われます。
ちなみに高崎山から失踪したオスが、久留米に出現したこともあり、これは、高崎山のサルの最長移動記録となっています。
ただ、最近はごくまれに、子連れのメスの単独出現例も報告されています。

サルとのトラブルを防ぐにはどうすれば良いのでしょう

1,近づかないこと
本来、野生動物は人を怖がっているため、人間と一定の距離を置いて棲み分けています。
人が近づけば、無用な争いを避けるため離れて行きます。
危険なのは、お互いに気が付かず急に出くわした時です。
思わぬ遭遇に、サルは人に対する恐怖心で、身を守ろうと飛び掛ってきます。
特に、追いつめられたり不意に見つめられると、彼等はかなり攻撃的になります。
ですから捕獲するため取り囲むと、サルをパニック状態に陥らせることになり非常に危険です。習性を熟知したプロの捕獲者以外が、近づくのは絶対に避けたほうが良いと思います。
そして彼等は基本的に入れる群を探していますので、長いこと町にとどまることはなく、そのうちどこかに行ってしまいます。差し迫った危険が無ければ、それまで待ってやることも必要です。
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2,餌をやらないこと
テレビで、観光客が車を停めサルに餌を与えているシーンをよく見かけますね。
しかし、餌付けをするということは、実は非常に危険なことなのです。
ここでまず、野猿公園についてお話しておきます。
大分に高崎山自然動物園があります。
ここでは30分に一回まかれる麦を目当てに、一日中サルが寄せ場に出ています。
ボクはしょっちゅうここへ通い、もう8年間もサルの撮影をさせてもらっています。
ここのサルが最初に餌付けされた目的は、一日中サルが見られるようにして観光客を呼ぶことと、近所の農作物を荒らさないようにするためだったそうです。
ところが、当時の市長さんが私財を投じてリンゴを買って置いたらしいのですが、サル達は見向きもしなかったそうです。
なぜだと思いますか?答えは簡単!
そう!大分の山にはリンゴはなっていませんね。サル達は、リンゴが食べ物だと分からなかったのです。
というわけで、最初の餌付けは見事に失敗してしまいました。
次に与えられたのは、どこの畑でも作っていて、サルにはお馴染みのサツマイモです。
ところが、このサツマイモにもサル達はなかなか近づかなかったのです。
なぜでしょう?
サル達は、イモがあるはずがない場所に、なぜイモがあるのだろうと警戒したのです。
うまい話には裏があるなんてことわざがありますが、サルもそう思ったのかもしれませんね。
でも、これは彼ら野生動物が危険を避けるために、絶対に必要な本能なのです。
人間には餌をやって可愛がろうと思う人もいるでしょうが、
逆に餌でおびき寄せて、捕まえてやろうと思っている人もいますよね。
結局、野生のサル達がまかれたイモを食べ始めるのに、何と3ヶ月かかったそうです。そして、現在高崎山には9時頃からC群、13時半頃からB群が出てきて、
一日中サルを観察することが出来ます。

「何だよ!餌やるなと言って餌やってるところ紹介してるじゃん」と言われるかもしれませんね。
ところが、実は高崎山には様々な教訓が生かされているのです。
確かに、最初はサル達に無計画にやれるだけの量の餌が与えられていたようです。しかも寄せ場には売店があり、そこで餌を売ってお役さんたちはサルに餌をやることが出来たそうです
その頃の高崎山はまさにサルの楽園、人々も手から餌を食べるサルに大喜びでした。
 ところが、ここで問題が持ち上がってきました。
まず、栄養が良くなってサルの個体数は増えていきました。
そして、人に対する警戒心をなくしたサルは、気に入らないことがあると人を噛むようになってしまったのです。

もうお分かりでしょう。安易な餌付けは
※1、本来は山の餌だけで暮らしていた野生動物に、農作物の味を教えてしまう
※2、人間は怖くないのだということを教えてしまう
という危険性があるのです。
結局、高崎山では、餌を寄せ場で売ることと、お客さんがサルに餌を与えることを禁止しました。
また、まく餌の量を計算して、一日中サルを見ることは出来るが、増えすぎないようにコントロールを始めました。
その後、噛まれる事故は起こっていませんし、サルの数も安定しているようです。
このように、きちんと管理されている場所を除いては、一切餌付けは行うべきではないと思います。
それはもちろん、この自分自身も例外ではないと思っています。
野生動物の撮影というと、毎日決まった場所に出現させるため、餌付けして人馴れさせるのが当然と思っている方が多いようですが、ボクはそういう手法はとっていません。
あくまでもこちらの存在は気付かせず、せいぜい臭いで誘引する程度でなければいけないと思います

もう一度言いたいのですが、餌付けすることで
1,動物に都合の良いときだけ餌を与え、飽きたら山へ帰れと言ってもそうはいかなくなる
2,慣れて人を怖がらなくなった動物達は、「なんで餌をくれないんだ」と怒って、飛び掛ったり噛んだりするようになってしまう
3,さらに味をしめた彼等は、家宅侵入するようになる
4,また栄養が良くなると、当然数は増え、サルの生息数は山で養える許容量を超え、あぶれた連中は畑や人家へと向かわざるを得なくなる
そして、ついには撃たれる運命となる
のです。
つまり、良いことだと思って餌を与える行為が人間とサル間にトラブルを巻き起こす一因となり、最終的に彼等の命を奪うことになっていることを忘れないでもらいたいのです。

野生動物に絶対に餌をやってはいけないというのは、こういうわけです。
さらに、家のまわりにサルが食べそうなものを置いたり、商品価値のない農作物を畑に放置する事はサルを居つかせることになります。
愛犬の食べ残しも片付けるくらい徹底したほうが良いとおもいます。
 
サルの正しい習性を知る
サルは、基本的に成人男性とイヌが苦手です。
もしサルに出くわして恐怖を感じたら、近くにいる大人の男の人か、イヌを連れている人のそばへ静かに行きましょう。
実は、サルも皆さんの事を怖がっています。
ですからサルを見ても慌てず、冷静に行動することです。

そして事故を防ぐために、正しいサルの習性を知ることが必要です。
サルは昔から身近な存在だったはずなのですが、タマネギやラッキョウを与えると、むいてもむいても皮なので怒り出すとか、下半身に関するひどい話だとか、誤解されていることが非常に多いようです。
また、ついでにお話しますと、毛づくろいはノミ取りと言われていますが、毎日ねぐらを変える動物にはノミはいません。
最近分かったのですが、実はその正体はシラミの卵だったそうです。
ボクは、過激派的な動物愛護主義者ではありません。
ですからサルが完全に人馴れしてトラブルが続出している場合は、苦渋の選択としての荒療治も仕方が無いと思います。
しかし、我々人間は、自然の恩恵なくしては生きていくことは出来ません。
昔の人々はそのことを自覚し、自然環境のバランスを壊さないように気をつけて、賢く野生動物たちと共存していました。
ニホンザルは50万年前から日本に住んでいて、一万年前に大陸から移ってきた我々日本人と、長年苦楽を共にしてきた身近な隣人です。
そして、ほとんどのサルの仲間が熱帯に分布する中、時には零下20度にもなる北国に暮らす彼等は、欧米では「奇跡のサル」と呼ばれ世界的にも注目されている貴重な存在です。
人間とサルの理想的な関係を破壊して、現在のような複雑な状況を作り出してしまったのは我々人間の責任だと思います。
ですから、我々にはそれを以前のような正常な状態に戻す義務があるのではないでしょうか。
もし私たちが本当に、「英知に満ち溢れた万物の霊長」であるのならば、それは可能なことでしょう。

なお撮影に通い始めて8年目の2月15日、高崎山で珍事が発生しました。
もともと人懐っこいことでは知られていたのですが、ジュリアというメスのサルが、休憩中のボクの肩に乗ってきて、なんと髪の毛をつまんで毛づくろいを始めたのです。
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もちろん餌付けなんかしていませんよ。
これには職員の方々もびっくり!
女房は「きゃあサルから、仲間って思われたったい~!」と大笑いでした。
感想は、かなり強く髪を引っ張るので、痛かったです。
でも肩に乗っただけでも嬉しいのに、毛づくろいまでしてくれるなんて大感激でしたね!
ただ一つ気になったのは、ジュリアがボクの髪の毛やオデコから、時々何かをつまんで食べていたことです。
前夜、急遽高崎山入りし、風呂も入らず車の中に泊まったとはいえ、シラミは多分いないとは思うのですが。


津田堅之介生物生態写真研究所
日本写真家協会(JPS)会員 日本哺乳類学会会員

津 田 堅 之 介

久留米市

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コメント

サルに危害を加えた人がどうなるかですか?

サルが危害を加えてきて、やむを得ず身を守るためでしたら、それは仕方が無いと思います。ただ、ボクが怖いのは、サルの習性をよく知らない方々が「サルは危険な動物だ!必ず事故が起こるから、捕まえて処分してしまえ!」と集団ヒステリー状態に陥ってしまうことなのです。付き合い方さえきちんと学べば、サルは決して危険な動物ではなく、仲良く暮らしていくことは可能だと思うんです

2006年7月14日、那珂川町中寺付近国道385号線の路肩にて、ニホンザルの死体を見たと会員のやすーさんから報告を受けました。
サルが危害を加えられた場合、加えた★☆★はどうなるのでしょうか。

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